(レビュアー: M.K)
1993年の発売当初は世界最高のズーム倍率を誇ったレンズである。
今でこそ28-300mmといった高倍率ズームが多数発売されているが、これらは基本的に画質を割り切って利便性に特化したレンズだ。
画質重視のキヤノンLレンズシリーズである本レンズは、値段や大きさ重さ(そして画質)の違いから、カテゴリーが違うと言える。
Lレンズとは言え10倍ものズーム倍率を持つレンズなので絞り解放から全域でシャープというわけには行かないが、必要に応じて絞ればしっかりと解像する。
コントラストも高い。
この辺りが一般的な高倍率ズームとは一線を画するところだ。
直進ズームが採用されていることからも報道写真などシャッターチャンス重視の撮影を意識して開発されたのは間違いないが、鑑賞目的の写真にも堪えうる画質を持った数少ない高倍率ズームだから他の分野でも積極的に活用したい。
全体としては中級クラスの標準ズーム・300mm望遠ズームを上回る画質で風景写真などにも十分対応できる。
テレ端300~350mmではやや像の甘さが見られるが、それでも一般的な望遠ズームのレベルだ。
絞り解放での周辺光量の低下も多少認められるが一般的なズームレンズより良好なレベルだ。
16-35mm、17-35mmといった広角ズームと組み合わせれば、レンズ2本で17mmから350mmを切れ目なく、ある程度以上の画質でカバーできる。
これは本レンズのような高品位な高倍率ズームでなければできないことだ。
自然の中などで足場の悪い状況ではレンズの交換頻度が低いに越したことはない。
このような状況でのレンズ交換にはリスクがあるし、不意にシャッターチャンスが訪れたなどとっさの時ほどミスを冒しやすい。
本レンズ1本で標準ズーム+300mm望遠ズームに近い重さがあるので必ずしも軽量とは言えないが、レンズ2本よりは荷物は小さくて済むはずだ。
なお最短撮影距離は焦点距離によって変わり、135mmのときの60cmが最短。
このときの撮影倍率は0.25倍で、ある程度の接写もこなせる。
万能レンズとしては重要な要素だ。